あの人に会いたい

森 節子 アルパージュ

「これが本物です」と心から言えるチーズを伝え続けたい
好きが高じて東京・神楽坂にチーズ専門店をオープン。
「商売を知らない素人だからこそできたんです(笑)」と振り返るアルパージュ店主の森節子さんにチーズにかける思いとその魅力を教えていただいた。

Profile
もり・せつこ/チーズ専門店「アルパージュ」店主。会社員時代に「チーズ&ワインアカデミー」(現在は閉校)で1年ほど学び、30歳代後半でチーズの会社に転職。2000年9月に現店を開業した。シュヴァリエ・デュ・タストフロマージュ・オフィシエ(フランスチーズ鑑評騎士の会)、ギルド・デ・フロマージュ・ギャルド・エ・ジュレ(チーズ専門卸販売)の称号を持つ。共著に『チーズのレシピ40』(日東書院本社)がある。


人生を変えた
チーズとの出会い
チーズ専門店「アルパージュ」は、神楽坂の大通りから少し入った横道にある。ショーケースにぎっしり並ぶチーズは、200種以上。産地のほかに特徴やおすすめポイントを記したカードが添えられ、旬のものや食べごろのチーズに貼られた手書きのPOPが目を引く。「サン・ネクテール/太陽王ルイ14世が食べていたチーズです」、「クロミエ・レ・クリュ/心地よいミルクの香りと木の実のコクがあります」などと書かれた文字とチーズを見比べながら、どれにしようか迷う時間も楽しい。
「どういう味がお好みですか?」来店者とスタッフの穏やかな会話が続く居心地のいい店内には、チーズのほのかな発酵香が漂い、森さんが無我夢中で積み重ねてきたオープン以来の19年が、ほどよく熟成していた。
「でも、30歳代の後半までは、会社帰りにチーズ売り場に寄るのが楽しみなふつうの会社員だったんですよ(笑)。大好きなチーズを食べるとほっとして、すごくリラックスできるから」
そんな森さんが、チーズの世界に飛びこむきっかけになったのは、某フランス料理店で供されたチーズとの出会いだった。

「ウォッシュタイプのラミ・デュ・シャンベルタンかエポワスだったと思います。においは強烈ですが、驚くほどお酒にぴったり。『なんておいしいんだろう』って衝撃を受けました」
折しも世はグルメブーム。たまの贅沢(ぜいたく)で行くレストランで、そんな体験をくり返すうち、もっと深くチーズのことを知りたいと思うようになった森さん。
情報誌で見つけたチーズとワインの専門スクールに1年ほど通い、チーズを扱う会社に転職。その1年後には、「アルパージュ」を始めていた。

100kgからなら売ってもいいよ
「開店から1年ほど経ったころ、もっとおいしいチーズを扱いたくて、フランスへ直接買いつけに行ったんです。でも、実績のない私はまったく相手にしてもらえません。それでランジスという流通の拠点ではなく、チーズを作っている産地に直接こうと決め、サヴォワの山に行きました。唯一『売ってあげよう』と言ってくれたのが、サヴォワ地方のチーズの熟成屋さんでした」

アルプス山脈の懐(ふところ)・サヴォワは山のチーズ「ボーフォール」で知られる産地。夏の山岳高地放牧「アルパージュ」で牛を養い、山小屋でその乳を使ったチーズを作り長期熟成させて仕上げる。山のチーズが大好きな森さんの店名の由来になった地でもあり、山々を回って放牧のようすもチーズのおいしさも確かめていた。

「ただし、売るなら100kgからが条件。そんなに仕入れて売れるのか、すごく不安でしたが、ここが踏ん張りどころと覚悟を決めて買いつけ、売りきりました。レストランやワインショップに営業に行ったり、考えつくことは何でも試したんです。作り手の方々や熟成屋さんたちとの交流で学ぶことも多く、訪ねる毎に山のチーズの素晴らしさや地域性に魅了されていったのです。チーズに携わる多くのプロに情熱を感じました。何よりもお客様においしいチーズだねって喜んでもらえると、元気がでるんですよ」

料理やお菓子に使って日常にチーズの楽しみを
チーズは大別すると、モッツァレラやマスカルポーネなどの『フレッシュタイプ』、カマンベールやブリーなどの『白カビタイプ』、ゴルゴンゾーラなどの『青カビタイプ』、表面を洗いながら熟成させる『ウォッシュタイプ』、山羊の乳を使った『シェーヴルタイプ』、サン・ネクテールやボーフォールなどの『ハードタイプ』の6種類がある。

「お酒はもちろん、紅茶や緑茶と合わせて食べてもおいしいですよ。柿やいぶりがっこにクリームチーズを合わせるなど、日本の食材との相性もいいんです。焼いたおもちにブルーチーズを塗ってのりを巻いたものも抜群なんですよ」

さっとゆがいたフキノトウを細かく刻んでチーズフォンデュに混ぜこむのは、森さんいちおしのレシピ。店舗やHP では、チーズ料理を楽しむ入口になればと超かんたんレシピを提供している。チーズ料理をもっといろいろと学びたい人には、ベターホームのお料理教室の「世界のチーズ料理」もおすすめだ。
「目下の夢は、スイスにスキー旅行に行って、本場のチーズフォンデュとラクレットを思う存分食べることかな(笑)」

長野県出身だからスキーも得意なんですと笑う森さん。チーズ三昧な人生に乾杯!チーズ専用の蝋(ろう)引き紙もフランスから仕入れたもの。青い線でフランスの地図が描かれている。
取り扱いは200種以上。おすすめポイントが書かれたラベルを眺めているとどれも食べてみたくなる。HPからオンラインショッピングもでき、ギフト仕様ラッピングでの注文も可。

Fromagerie Alpage チーズ専門店 アルパージュ
東京都新宿区神楽坂6-22 TEL : 03-5225-3315
11:00~19:00(月~木・日祝)、11:00~20:00(金・土)
無休(年末・年始のみ休み)
https://alpage.co.jp /
※外部のウェブサイトにつながります
※表示の情報は掲載日時点の情報です。掲載した時点以降に変更される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

撮影/ノザワヒロミチ 文/長井亜弓

※当ページのコンテンツは、ベターホームのお料理教室の受講生の方のための会報誌「Betterhome Journal」2019年4月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

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「月刊ベターホーム」が 2018年11月号より、 ベターホームのお料理教室の受講生向け会報誌にリニューアル︕ 「おいしいって、しあわせなこと。」をキャッチフレーズに、 料理レシピや食についての情報を掲載しています。

 

 

 

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