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【連載・わたしのみそ作り】番外編 教えて!地域のみそ~江戸甘みそ・江戸みそ

この連載では、ベターホームの先生・スタッフ計9名の「みそ係」が、自宅でみそを作る様子をご紹介しています。これまでの目次はこちらから→

番外編「教えて!地域のみそ」をお届けしています。北海道みそ仙台みそに続き、今回は東京のみそ。東京在住のあんみつ先生と、事務局スタッフぱせりが「江戸甘みそ」「江戸みそ」について学びながらご紹介します。


近所のスーパーには売ってない!

「東京には各土地から人々が集まってくるからか、全国各地のみそが売られています。近所のスーパーを3件まわってみたら、30~40種類くらいありました。北海道みそから仙台みそ、八丁みそ、京都白みそ、九州麦みそなど北から南まで。中でも多かったのは信州みそと田舎みそ(麦みそ)でした」

「30~40種類!すごいバリエーションですね!でも、東京のスーパーで、東京の名を冠したみそを見かけたことがないような気が。ベターホームのお料理教室でも、関東では『みそ』と書いてあるレシピはだいたい信州みそを使っていますよね・・・。東京ローカルなみそってあるんですか?」

「『江戸甘みそ』って聞いたことがありますか? 江戸時代からいろいろな地域のみそが全国から伝わり醸造・販売されていましたが、なかでも江戸っ子に人気だったというのが、江戸甘みそ。東京都地域特産品認証食品にも認定されているみそですが、今回チェックしたスーパーにも並んでいませんでした。実は私もこれまで食べたことがなかったんです。というのも、第二次世界大戦中に贅沢品とされて禁止され姿を消してしまったそうで、現在、都内でも数件しか醸造されていないんです」

「スーパーを3件まわってもないなんて、レアですね! 贅沢品とされていたなんて、どんなみそなんでしょうか?」

 


江戸っ子が好んだ粋なみそ

「醸造と直販を行っている、広尾にある『東京江戸味噌』さんにうかがってみました。こちらでは『江戸甘みそ』のほか、『江戸みそ』も販売されています。両方とも、米こうじを使った米みそです。

「江戸甘みそは、塩分が5%程度で、こうじの量が大豆の2倍近い『甘みそ』。味見をすると、とろりとした甘味で、濃厚な香りがするけど、後味はさっぱり。フレッシュな感じが今までに体験したことがなく、とてもおいしく感じられました。みそ田楽、どじょう汁、土手鍋などに使われていたようですが、塩味が濃くなくて、甘さはあるけどくせはないので、いろいろな料理に合わせられそうです」

 

「こうじの量が多い!贅沢と言われる所以はこれですね」

 

 

「江戸みそは、こうじの量が大豆と同量で、塩分が9%程度の『甘口みそ』。江戸の庶民が常食していたものだと教えていただきました。こちらは甘味も感じられるけれどしっかり塩味も感じられ、おみそ汁にするとちょうどいい具合です。江戸甘みその方は、おみそ汁にすると塩分が物足りなく感じるため、ほかのみそを合わせるとよいとうかがいました」

 

「江戸みそがふだんのみそ、江戸甘みそはちょっと特別なみそだったんですね」

 

 

「江戸みそを使った江戸前のそばつゆも、味見をさせてただきました。『薄いみそ汁みたいなものだろう』と思いきや、見た目もお味もまさに、濃口しょうゆで作ったそばつゆ。おどろきでした。このそばつゆは、みそに水を加えて布でこし、酒を入れて煮詰め、鰹節を入れて少し煮たら再び布でこして作るそうです。しょうゆの普及する前は、この江戸みそが江戸料理に多く使われていたそうですが、納得の味わいでした。このそばつゆのレシピは、東京江戸味噌さんのホームページで紹介されています」

「ところで、2種類とも色が濃いのに、フレッシュな味わいだというのが意外です」

 

 

「濃い茶褐色の見た目からすると長期熟成のみそのようですが、熟成期間は約2週間〜20日、夏ならわずか10日ととっても短いのです」

 

「えっ!驚きの短さです。1~2年かけて熟成させるみそがあったり、私達も何か月もかけてみそを作っているというのに。そんなに早くみそができるんですか?」

 

「大豆を蒸し、温度が高いうちにこうじを混ぜて一気に発酵をすすめるそう。塩分が少ないので変質が早く、保存できる期間が短い。夏場は10日間くらいしか日持ちがしなかったので、江戸っ子は、近所でその日使うみそを買い求めていたんですって。全国のいろいろな地域のみそが伝わる中、江戸甘みそ・江戸みそが人気だったのは、贅沢なみそだということ、そして新鮮さを命とするところが江戸っ子の気質に合ったからかもしれません」

「『宵越しのみそは持たねえ!』と言ったかどうかはわかりませんが、江戸っ子の声が聞こえてきそうです。短期発酵で貯蔵期間が短いのは、土地の広さに余裕がない東京にフィットした製法ですね」

 


料理に使ってみました

「江戸甘みそ、江戸みそを早速購入し、料理に使ってみました。豚こま切れ肉150g、長ネギ10cmくらい、しょうが15gを刻んでごま油で炒め、江戸甘みそ100g、水100ml、を加えて煮詰めて肉みそに。ごはんに合います。厚揚げにのせ、さらにチーズをのせてスキレットで焼いても美味。江戸みそで、江戸時代の定番、田楽も作ってみました。甘さがあるのでみりんは控えめにして、ゆでたこんにゃくや、焼いた厚揚げの上にのせ、江戸時代に思いを馳せながら食べると・・・最高のおいしさです!上品な味で塩気がやさしいのでみそ漬けや煮ものにも使いやすそうです」


八丁みそと見た目は似ているけれど・・・

「肉みそ、とってもおいしそうです!私も東京在住なので、近所のスーパーをまわって探してみましたが、近所のスーパーには江戸甘みそも江戸みそもありませんでした。その後新宿の百貨店で、みそ売り場をのぞいたところ、江戸甘みそを発見!一種類だけ置かれていました。パック越しに見る色味は、仙台みそよりも濃く、まるで八丁みそです。並べてみてみると・・・」

「左が江戸甘みそ、右が八丁みそですね。江戸甘みそはつやつや、しっとりしていて、八丁みそより水分が多いのがわかります」

 

「味をみると、あんみつ先生が言うとおり、コクはあるけどたしかにフレッシュでスッキリ。一方で、うまみもしっかりとあり、発酵して成熟した味がします。そもそも八丁みそは豆みそで、米みその東京甘みそと異なる系譜ですが、食べ比べると江戸甘みそのフレッシュさが際立ちました。和食以外にも使えそうだなと調べてみると、江戸甘みそを使ったレトルトカレーが市販されていたり、東京江戸味噌さんでは江戸みそを使ったおしゃれなカナッペのレシピを発信されていたり。いろいろな料理に活用できるんですね」


ぱせりの江戸甘みそ・江戸みそまとめ

「若いフレッシュな風味と成熟したうまみが共存。戦時中に姿を消して幻だと言われているけれど、探せば出会えます! 近所のスーパーでも売ってくれるといいのにな~」

 


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