あの人に会いたい

ユイミコ 和菓子ユニット

和菓子のある暮らしには、季節の移り変わりを愛(め)でる豊かさがあると思うんです
和菓子ユニット「ユイミコ」の手作り教室は、いつも満員御礼の賑わい。
シンプルなのに情緒豊か、愛らしくて上品な和菓子を教えてくれるお二人に、和菓子作りを始めた理由とその魅力について聞いた。

Profile
ユイミコ/小坂歩美(左)、大森慶子(右)の二人による和菓子ユニット。大切にしているのは「おいしそう」であること。伝統的かつ基本的なものをベースにしつつ、今の時代に無理なくなじむやさしい和菓子を提案している。大森さんは2019年12月にはベターホーム渋谷教室で、和菓子の1日教室を担当した。日本テレビ系列「キユーピー3分クッキング」や、書籍、WEBなどのメディアでも活躍中。ユイミコアトリエの和菓子教室の詳細はHPへ。
https ://www.yuimico.com  ※外部のウェブサイトにつながります

和菓子で何か始めてみようよ
小坂歩美さんと大森慶子さんの出会いは製菓学校。会社員から転身した小坂さんは、子どものころからお菓子作りが好きだったことと、古民家再生を手がけていた父親の影響で「日本の文化や伝統を大切に伝えていく仕事をしたくて」和菓子の道へ進んだ。建築デザイナーを志していた大森さんは、施主と施工者の間に入る仕事ではなく「最初から最後まで自分で完結できる仕事をしたい」と考え、ふとひらめいたのが和菓子作りだった。

5人1組の同じ班で和菓子の技術を学び、卒業後それぞれ別の和菓子店での経験を経て、2008年に和菓子ユニット「ユイミコ」を結成した。言い出しっぺは大森さん。当時、それぞれの事情でお互い和菓子作りから離れていたが、「せっかく学んだのに、何かしないともったいないよね」と意気投合したのだ。
「ただ、結成したものの具体案は全くなくて(笑)、和菓子を作ってブログにアップしたり、イベントに参加したり、しばらく試行錯誤が続いたんです」

転機になったのは、北鎌倉の古民家で和菓子のワークショップを開いてみない?と、声をかけられたこと。「ミクシィ(当時人気のSNS)」などで参加者を募り、月に一度の和菓子教室が始まった。ちゃぶ台を囲んでの和気あいあいとした雰囲気と、美しくて愛らしく、しかもおいしそうなユイミコの和菓子。お鍋とあんこを背負って北鎌倉通いを続けるうち、口コミで評判が広がり、「うちでも和菓子教室をやってくれませんか」と声がかかるようになったのだ。

活動の場は少しずつ広がっていき、現在は巣鴨に構えたアトリエを中心に、世田谷や青山など各地で和菓子教室を開催。募集をかけると即満席、長年通ってくるリピーターも少なくないという人気ぶりだ。

できたてがおいしい家庭の和菓子
どら焼きや羊羹のような庶民的な和菓子はともかく、お茶席などで供される上生菓子は、職人さんが作るものというイメージが強いが、「練り切りの生地を薄いふきんに包んで、きゅっとしぼるだけでもかわいいし、ピンクや黄緑で春の色、赤や黄色で秋の色と、色づけを変えるだけで季節のお菓子になるんです。お料理初心者でもお子さんでも工作気分で楽しめるんですよ」とユイミコのお二人は言う。

むずかしく考えなくて大丈夫。
上生菓子の練り切りだって自宅で気軽に作れるんですよ
家庭料理と高級レストランの味が違うように、お菓子だって家庭と専門店の味をそれぞれ楽しめばいい。家庭では作る楽しさとできたてのおいしさを味わい、特別な日には職人が丹精こめた上生菓子を買い求め、ちょっと贅沢な気分を味わう。そんな日々を想像すると、豊かな気分になってくるから不思議だ。

季節をぎゅっと凝縮したおもしろさ
「和菓子の意匠は、季節と季節の間を切りとることも多いんです。冬から春になるときの〝水がちょっと温(ぬる)んできました〞とか、〝雪の下から芽吹きがありました〞とか、そういう情景を連想させてくれるのも、和菓子のおもしろさだと思います」

奇抜なデザインで目をひくのではなく、完成された伝統的でベーシックな和菓子本来の形の美しさ、愛らしさを紹介したい。
リピーターが多く毎年同じものを教えるわけにはいかないので、アレンジは欠かせないが、抽象的に見えても、お菓子の名前を聞けば「なるほど。そんな情景が目に浮かびますね」とうなずいてもらえるものにしたい。家でも再現できるよう、しっかり覚えて帰ってもらおう……。ユイミコの和菓子教室が好評なのは、そんなお二人の思いが伝わるからだろう。

「ネタが尽きて困ったときは、季語からヒントをもらうことも多いんですよ。言葉だけでイメージできないときは、画像検索しながら情景を確かめたり。和菓子を通して日本の文化を深く知ることにもつながって、すごくやりがいがありますね」

「椿」(左)、「水仙」(右)。どちらも、やさしい色合い。 「今の暮らしには、淡い色味のほうがおいしそうに見えると思って」。
『ユイミコ謹製抜き型つき はじめての和菓子』(講談社)、『小さなおもてなし 和菓子こよみ』(文化出版局)、『道具なしで始められる かわいい和菓子』(講談社)。
奥は、上生菓子などの成形に使う「三角べら」。抜き型や、まんじゅうなどに押す焼き印でも、季節感を表現。

ユイミコアトリエ
東京都豊島区巣鴨1-41-3 NEST YS 1F
第1または第2月火木、その次の土日に開催

元はカフェだったという巣鴨のアトリエ。居心地のいい空間だ。
「YUIMICO」の看板は大森さんの手作り。

※表示の情報は掲載日時点の情報です。掲載した時点以降に変更される場合もありますのであらかじめご了承ください。

撮影/岡本裕介 文/長井亜弓
※当ページのコンテンツは、ベターホームのお料理教室の受講生の方のための会報誌「Betterhome Journal」2020年1月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

ベターホームのお料理教室の受講生向け会報誌「Betterhome Journal」

「おいしいって、しあわせなこと。」をキャッチフレーズに、 料理レシピや食についての情報を掲載しています。2020年1月号の特集は「だいこん VS はくさい食べつくし」。冬になって甘味が増してきただいこんとはくさい。おなじみの両者が、調理法や味つけなどのテーマ別においしさ対決!和洋中とりそろえた16レシピの中からお気に入りを見つけて、“わが家の定番” に加えてください。

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