“低糖質ダイエット”って何?

vol.1 糖質は体に不可欠なもの

日本はダイエット大国。次々と新しいダイエット法が出ては消えて…をくり返しています。そんな中、最近よく耳にするのが、〝低糖質ダイエット〞(糖質制限ダイエット等の呼び方もある)。ごはんやパン、甘いお菓子などに代表される炭水化物(主に糖質)を断つ、あるいは摂取量を減らすダイエット法です。

「やせた」「効果があった」などの成功談をよく聞く一方、「頭がぼーっとする」「やせたけれど、すぐにリバウンドしてしまった」といった失敗談にも事欠かないようす。本当のところは、どうなのでしょうか。

[ 取材協力 ]
本田佳子先生
女子栄養大学栄養学部教授(医療栄養学)。管理栄養士。

脳は糖質しかエネルギーにできない
人間の体でもっとも重要な器官のひとつである脳は、糖質をエネルギー源としています。脳には「脳関門」という文字どおり関所のようなものがあり、糖以外のおかしなものを入れないようにしています。そのため脳のエネルギーは糖質以外では代替がきかないのです。さらに、脳は大食漢でもあります。脳の重量は全体重の2%程度。にもかかわらず、1日の摂取エネルギーの10〜20%も脳で消費してしまうのです。
脳は1日に最低でも100g ほどの糖質を必要とします(必要最低量は体の大きさによっても前後する)。糖質を重量で聞いてもあまりピンときませんが、これをおなじみのエネルギー量に換算すると400kcal程度。これは仮に体をまったく動かさないときでも必要なので、実際にはもっと食べなければならないということです(ただし、炭水化物だけではなく、肉、魚、とうふなどのたんぱく質、野菜類にも糖質は含まれる) 。
将棋の棋士が対局中に甘いものを食べるという話を聞いたことはありませんか?体はあまり動かしていませんが、頭脳(思考)はフル回転しているために、体が糖分を欲するのだと思われます。

糖質をとらないと命にかかわることも
棋士ほどではないにせよ、私たちが仕事や勉強などで頭を使えば、体が糖質を欲するのは当たり前のこと。なのに、摂取するのを我慢すれば低血糖状態となり、ぼーっとする、眠くなる、思考力がなくなるなどの弊害が出てきます。いくらやせても、日常生活に支障をきたすようでは本末転倒です。
また、肝臓に貯蔵されている糖質のグリコーゲンは約半日分のエネルギー量に過ぎません。絶食や糖質制限などで糖質が体に入ってこないと、エネルギー源として肝臓で脂肪を分解して代替えします。このときケトン体という物質が生成されます。すると血液中のpH値が正常ではなくなり(これをケトアシドーシスという)最悪の場合は命にかかわることもあるそうです。
また、無酸素運動をする際にも、体は糖質しかエネルギーにできません。無酸素運動とは、「全力で走る」「一瞬で重いものを持ち上げる」などのこと。ふだんは忘れがちですが、これらは外敵から身を守るときに必要な運動(動き)です。そういった意味でも、糖質は生命を維持するために重要なのです。

糖質のとりすぎはダメ
だからといって、糖質のとりすぎはもちろんNGです。糖質は生きるために必要なものであるがゆえに、体は生理的にそれを強く欲するもの。欲望のままに食べれば当然太りますし、エスカレートすれば糖尿病になることもありえます。
人間の体というのは、ひとつの栄養素だけ摂取しても生命活動に役立てることができません。たとえば、糖質はビタミンB1と摂取することで代謝が促進されますし、糖質と脂肪は食物繊維と摂取することで腸管からの吸収をゆるやかにすることができます。このように栄養素同士は、いわば〝お互い様〞の関係。バランスがとれていると、おのずと体の調子もよくなります。
糖質はとりすぎても、とらなさすぎてもダメ。たんぱく質、野菜類などを組み合わせながら、上手にコントロールしましょう。

たとえばこんなメニュー
ペンネ・アラビアータ
糖質(ペンネ)、たんぱく質(ツナ)、ビタミン類(ブロッコリー、たまねぎなどの野菜)がバランスよくとれるパスタ料理です。かみごたえのあるペンネは、少量でもおなかがいっぱいになるため、ダイエット中にもおすすめ!

材料
【2人分】
・ペンネ…100g
・ブロッコリー…100g
・マッシュルーム…50g
・たまねぎ…1/4個(50g)
・にんにく…小1片(5g)
・赤とうがらし…1/2本
・オリーブ油…小さじ1
・トマト水煮缶詰…200g
・ツナ缶詰(水煮)…小1缶(80 g)

[ A ]
・白ワイン…大さじ1
・塩…小さじ1/8
・こしょう…少々

作り方(1人分284kcal /糖質46.9g、塩分1.3g)
【1】
ブロッコリーは小房に分ける。マッシュルームは5㎜厚さに切る。たまねぎ、にんにくは、みじん切りにする。赤とうがらしは種をとり、小口切りにする。

【2】
鍋に湯1リットルを沸かして塩大さじ1/2(材料外)を加え、ペンネをゆで始める。ゆで時間の2分前になったらブロッコリーを加えてゆで、一緒にざるにとる。

【3】
( ペンネをゆでる間に)フライパンにオリーブ油とにんにくを入れ、弱火で炒める。香りが出てきたら、たまねぎと赤とうがらしを加え、1~2分炒める。トマト、マッシュルーム、[A]を加え、約2分煮る。

【4】
【3】にペンネ、ブロッコリー、ツナを加え、ひと煮立ちしたら火を止める。

PAGETOP