先生たちの社会科見学

ホンビノス貝漁&海苔の養殖

ベターホームの先生たちが教室を飛び出し、さまざまな食の現場を訪ねてレポートします。

 

 

 

 

 

見学するのは、千葉教室 香川瑛子先生(写真左)、中川実紀先生(写真右)

 

 

 

 

教えてくれるのは、船橋市役所農水産課 技師  梅田新也さん(写真左)、船橋市漁業協同組合 元専務理事 松本好司さん(写真右)

貴重な干潟「三番瀬(さんばんぜ)」で受け継がれる漁業
今回訪れた「三番瀬」は、千葉県船橋市など4市に接する干潟。中川先生と香川先生は、船橋市漁業協同組合のホンビノス貝漁と伝統的な海苔の養殖を見学しました。
三番瀬がある東京湾北部は、かつて多様な魚介類がとれた豊かな漁場でした。戦後、埋め立てで漁場が消滅するなか、現在も漁業が続く貴重な干潟です。
船で30分ほど沖へ出ると、ホンビノス貝を山積みにした漁船に会いました。この貝はあさりのような味わいで、カナダやアメリカではクラムチャウダーなどに用いられます。日本では1998年に生息が確認され*、採貝(さいかい)は2005年ころからはじまりました。

*ホンビノス貝は日本に生息していなかったが、1998年に東京湾の「幕張の浜」(千葉市美浜区)で生息が確認された。船体への付着やバラスト水(荷物が積まれていないときに船体を安定させるために積む水)などによって移入したと推測されている。

ホンビノス貝が好んで生息するのは、三番瀬漁場の水深が5mほどになるあたり。漁が行われるのは、日の出から午前11時ぐらいまで。水揚げした貝を、船上で商品になる貝かどうかを選別した後、海水で洗って、20kgぐらい入るネットに詰めていく。

寄港した船から揚がったホンビノス貝は、そのまま問屋さんに。買いとってもらえる量は、漁況によって上限が決められている日もあるそうです。ホンビノス貝は、この後、小売店や料理店へと出荷されます。船橋市内のスーパーや通販などで購入できます。

「三番瀬はあさり漁が盛んでしたが、近年、青潮の被害で、ほとんど採れない年もあります。青潮に強く、1年を通して安定的に採れるホンビノス貝は、漁師の助けになります。同時に、漁法がほぼ同じこともあり伝統的な採貝の技術を受け継いでいけます」(漁協の松本さん)
ホンビノス貝はあさりなどの在来種とは生息環境が異なるため、侵食することはありません。漁協では市と協力して、新しい水産資源のPRに努めています。県より「千葉ブランド水産物」の認定を受けてからは認知度も増し、新規就漁者も増えているそうです。


船からロープをつけた錨(いかり)を海に投入してウィンチでロープを巻き取り、船を錨に向けて引き寄せながら漁を行います。カゴを海に沈め、ふり棒を前後に動かしながら海底をさらうようにして、貝の手ごたえを感じながらカゴの中に入れていきます。

鋤簾(じょれん)とも呼ばれる採貝用のカゴ。先端の熊手のような刃で海底をさらい、貝をカゴの中に入れていきます。あさり漁には網目の細かいカゴが使われます。

三番瀬海域ではスズキやコノシロなども水揚げされるほか、海苔の養殖でも有名です。ここ数年不漁が続いているそうですが、今、海には10月に種付けした海苔が順調に育っています。
「現在、4軒の生産者さんががんばって三番瀬の味を残してくれています」(市役所の梅田さん)


「海水の養分と、太陽の光を浴びて元気に育つ海苔」
海苔の種を付けた網を支柱に張った養殖場。潮が満ちると海苔は海水につかり海の養分を吸収、潮が引くと海水から出て太陽を浴び殺菌されます。この繰り返しで、おいしい海苔に育ちます。

最初の芽を摘んで作る海苔は、とくに香りが高くやわらか。最上ランクの「むらさき」として販売されます。


砂を入れたり底引き網で海底を耕すなど、三番瀬を豊かな漁場にするための行政の取り組みなどを聞きました。

伝統的な漁を大切にしながらも新たなブランドを育てている三番瀬。そのとり組みを垣間(かいま)見て、海からの恵みを享受できるありがたさを強く実感することができました。

こだわりの製品
「三番瀬みなとや」で販売されている三番瀬産の商品。右から、船橋三番瀬海苔(むらさき)10枚入り1,080円/御菜浦生のり佃煮130g648円/ホンビノス貝700g500円(すべて税込)
※表示の価格や内容量等は掲載日時点の情報です。掲載した時点以降に変更される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

作ってみました!
あさりやはまぐりと同じような食べ方ができるホンビノス貝。地元ではみそ汁にすることが多いそう。直売所で購入した先生たちは、さっそく料理を作りました。鍋でゆでるか蒸してむき身にして使います。かたくならないよう、加熱しすぎないのがポイント。


中川先生「ホンビノス貝は濃いだしが出て砂抜きも不要。新しい食材として上手に調理し、食卓にとり入れたいですね!」(写真左)、香川先生「環境の変化で誕生した貝漁と伝統ある海苔の養殖。知らなかった船橋を再発見しました。」(写真右)

【Data】
三番瀬みなとや(船橋市漁業協同組合直売所)

千葉県船橋市日の出1-22-1
TEL:047-434-0668
Access
【電車の場合】JR船橋駅、東武野田線船橋駅より徒歩20分。京成船橋駅より徒歩18分。
【バスの場合】京成船橋駅南口より京成バスシステム「丸善」行き、「船橋海浜公園」行きに乗車、「湊中学校」降車、徒歩4分。
http://www.funabashi-gyokyou.jp/minatoya
※外部のウェブサイトにつながります
Information

【営】10:00~15:00
【休】毎週火・水曜日(時化(しけ)により臨時休業あり)、年末年始(12/26~1/5)、お盆
*海苔すき体験や、船に乗って漁を見学する「漁業体験」を毎年行っている。また、船橋漁港で毎週第3土曜日の9:00 ~ 11:00に開催される「船橋漁港の朝市」にも出店。

撮影/河谷俊輔 文/横尾久美子

※当ページのコンテンツは、ベターホームのお料理教室の受講生の方のための会報誌「Betterhome Journal」2019年1月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

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