“低糖質ダイエット”って何?

vol.5 高齢になったら“多様食”を心がけましょう

糖質制限(低糖質ダイエット)ブームは今や、外食産業からコンビニ・スーパーの商品にまで広がっています。ブームは、特に食の節制を必要としない人にも影響を及ぼします。ところが、高齢者がむやみに糖質制限に走ると、場合によっては寿命にもかかわる健康障害に陥りかねません。

[ 取材協力 ]
新開省二先生
東京都健康長寿医療センター研究所副所長

健康寿命をのばすには
今、日本人の健康寿命(日常生活を支障なく暮らせる期間)は平均寿命よりも10年ほど短いそうです。特に、高齢期は病気などにより障害が起こりやすく、介護が必要な人が増えてきます。東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二先生は、高齢者の健康実態を長年にわたって調査研究しています。これらの調査から明らかになったのは「最終的に要介護になるのは、低栄養でやせている人」だということ。新開先生は「60歳ころからは、健康意識をメタボ予防から低栄養予防へとチェンジする必要があります」と提言します。多くの現代人はとにかく、太ってメタボにならないようにするのが健康によいと考えがち。ですが、「高齢になってしっかり栄養を摂らないと、筋力や認知機能が低下して介護が必要になります」と先生は断言します。さらに、栄養不足はやせている人ばかりではなく、一見太っている人にも起こりうるので、高齢に向かう、みなさんに注意が必要です。

高齢者が炭水化物を減らすと
“栄養をしっかり摂る”とは、カロリーはもちろんのこと、各栄養素をまんべんなく摂取するということ。体の組織を作ったりエネルギーの源となったりする三大栄養素、〈炭水化物・たんぱく質・脂質〉はまずかなめです。三大栄養素の理想的な摂取割合は、1日に必要なエネルギーでみると、炭水化物を50~65%、たんぱく質は13~20%、脂質は20~30%。1600kcal必要な人は少なくとも800kcalは炭水化物から摂るとよいわけです。ところが、糖質制限で炭水化物を必要以下に減らすとどうなるでしょう。
食材にはさまざまな栄養素が含まれます。ごはんやパンといったいわゆる炭水化物の食材には、糖質以外にもたくさんの栄養が含まれており、炭水化物を制限すると、エネルギーばかりか、ビタミンB、葉酸、ビタミンC、鉄などの微量な栄養素が圧倒的に不足し、食物繊維も不足します。体の正常な機能は、三大栄養素を含むすべての栄養素が緻密に反応し合ってかなうものですから、体調が悪くなるのは明らかです。
高齢者の食事の実態を見てみると、栄養状態の悪い人は、おかずや食品の種類が少なく、おもに炭水化物を中心に食事を摂っている傾向が見えるそうです。炭水化物でかろうじてエネルギーをまかなっているわけですが、栄養の量もバラエティーも貧弱。もし、こうした人たちまでもが、誤った健康常識やブームから主食類を控えるようになれば、体への悪影響は甚大です。

糖尿病と糖質
中高年になると糖尿病やその予備軍の人口が増える傾向にあります。医師に受診し、その指導の下に糖質やカロリーの制限を行うならばよいのですが、自己流で糖質制限や炭水化物を減らす食生活を続けるのは危険です。医学界では「糖質制限を長期にわたって行うと、メリットよりデメリットが多い」という報告が多いのが現状です。日本糖尿病学会では「やせるためには総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。炭水化物のみを極端に制限するのは現時点では確証が不足しているのですすめられない」という趣旨の提言を出しています。また、糖尿病の指標になっている血糖値やコレステロールの基準値は、健康な高齢者の実態にそぐわないので見直そうというのが昨今の傾向だそう。病気の基準なのか、健康長寿の基準なのかと考えると、基準値の意味は変わってくるわけです。

多様な食品を食べて健康長寿
高齢者やこれから高齢へ向かう人に対し、新開先生は「とにかく毎日『多様な食品を口にする“多様食”』を心がけて大切にしてください」と唱えます。高齢者が1日に食べたい10品の食品(肉類、魚介類、卵、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜、いも類、くだもの、海藻、油脂類)と、主食の炭水化物をきちんと摂る毎日の食生活が健康寿命をのばすのです。


たとえばこんなメニュー
しゅうまい利用の 食パン肉まん
朝食や昼食は貧弱になりがちです。市販品なども活用して食品数を増やし、たんぱく質などを意識して摂りましょう。一度に主食の量を食べられないなら、おやつにいもやホットケーキ、くだものなどを食べて補って。

材料
【2人分】

・しゅうまい(市販品)… 大4個
・食パン(8枚切り)… 4枚
・しょうゆ・練りがらし … 各少々

作り方(1人分330kcal/塩分1.9g/糖質38.8g)
【1】
しゅうまいは冷凍なら解凍する。
【2】
食パンの耳を切り落とし、霧吹きで水をかけるか、水でぬらしたふきんではさみ、しめらせる。
【3】

ラップに食パンをのせ、真ん中にしゅうまいをのせる。ラップをねじり、パンの口をとじる。4個作る。
【4】
4個をラップのまま耐熱皿にのせ、電子レンジで約1分30秒(500W)加熱する。からしじょうゆをつけて食べる。

★糖質は1gは4kcalです。ですから、上記の糖質分のエネルギーは155kcal。総カロリーとの差は、たんぱく質などほかの栄養素のカロリーです。ちなみに、ごはん1膳(120g)は総カロリー202kcal、糖質は44.1gで176kcalです。なお、「炭水化物(g)=糖質+食物繊維」で計算します。

※当ページのコンテンツは、「月刊ベターホーム」本誌2018年1月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

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