あの人に会いたい

新開省二 東京都健康長寿医療センター 副所長

あなたの栄養バランスは?
健康寿命をのばす秘訣は食べ方にあるんです
生活習慣病予防には「粗食」を心がけたほうがいいと考える人は少なくない。しかし、「高齢者は粗食ではだめ」と新開さんはいう。健康寿命をのばして“死ぬまで元気”でいられる食べ方と暮らし方を聞いた。

Profile
しんかい・しょうじ/医師・医学博士。愛媛大学医学部助教授(公衆衛生学)を経て、東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)へ。2015 年より現職。日本公衆衛生学会などの評議員、厚生労働省「健康日本21(第二次)」策定専門委員ほかを歴任。健康長寿に詳しい医師として、積極的に啓発活動を行っている。






延べ数千人の追跡調査で
見えてきたこと
「試験管を片手に実験を重ねる『生化学』の研究で学位を取得しましたが、疫学研究にも興味があって、大学院を修了後に1年間国立公衆衛生院(現・国立保健医療科学院)で学んだのが、今につながるきっかけですね」

疫学研究とは、個人ではなく、ある程度のまとまりのある集団を対象に、何年にもわたってデータを蓄積しながら健康状態を追跡していくもの。新開さんが「東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)」に来た1998年は、1991年に始まったプロジェクトが終盤を迎えていた時期だった。東京の郊外、小金井市在住の65歳以上の高齢者のうち、10人に1人を無作為に抽出し、10年かけて追跡していく調査で、対象者はおよそ1000人。都市と地方を比較すべく、秋田県南外村の65〜87歳の全住民約1000人も調査対象となっていた。

「栄養状態、体力、血液成分などの医学的な項目のほか、心の健康や社会との関わり方など、調査項目は多岐にわたります。蓄積されたデータを分析し、健康寿命との関係を調べたら、意外な事実がみえてきたんですよ」

それは、太った人やコレステロール値の高い人のほうが、やせた人やコレステロール値の低い人よりも死亡率が低く、要介護や寝たきりにもなりにくいということ。もちろん中年期は、動脈硬化や生活習慣病の原因となる肥満や高コレステロールは要注意だが、日本の一般的な高齢者に関する限り、肥満や過栄養よも〝やせ〞や〝低栄養〞のほうが問題で、「粗食はもってのほか」。しっかり食べてきちんと栄養をとった人のほうが健康寿命も長いことが、信頼に足る数値となって実証されたのだ。

全世代にすすめたい栄養素密度の高い多様食
「低栄養状態になると、血中の栄養成分であるアルブミン、ヘモグロビン、総コレステロールの値が下がり、血管がもろくなり、筋力が弱って転倒し、骨折しやすくなります。また、フレイルになるリスクも高い。でも今からでも食生活を変えれば、健康寿命はのばせるんですよ」

〝フレイル〞とは、高齢者の心身の機能が低下して活力がなくなった状態を指す言葉。適切に支援すれば回復も可能なことから、新開さんが勤めるセンターでは「フレイル外来」を設置し、総合的な診療を行っている。

「栄養素密度の高い〝多様食〞を心がけていただくめやすとして、『食品摂取の多様性スコア(DVS)』も作成しました。主食以外に、肉、魚介類、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、海藻類、いも、くだもの、油脂といった、10種類の食品群を毎日とっているかどうか、10点満点でチェックするものです。1日のうち1回でも食べていれば1点。7点以上が目標です。とくに高齢者は肉と牛乳・乳製品などのたんぱく質を充分とっていただきたいんです」

きちんと栄養をとることは全世代間に共通する大事な視点。成長期の子どもたちやダイエットが気になる若い女性、メタボ対策中の中高年の皆さんも、ぜひチェックして一日平均7点以上を目指してみてほしい。

楽しく食べて健康長寿
食事はできるだけ誰かと一緒にとるようにすると、多様性スコアも自然に上がっていきますよ
「栄養と並んで大切なのは、体力をつけることと、社会参加をすること。この3つを私たちは健康長寿の三大柱と呼んでいるんです。栄養が足りなければ筋肉や骨が弱り、体力も落ちます。また、体を動かさなければ、食欲がわきません。一方、積極的に外に出て体を動かせば、体力もつき、食欲もわいてきます。社会参加といっても買物に出る、誰かと食事をする程度のかんたんなことでいいんですよ」

ベターホーム協会でも、新開さん監修のもと、既刊の『つるかめ食堂』のほか、2019年3月に刊行した『元気ごはん 栄養素密度が高い食事のすすめ』で〝多様食〞の具体例や調理法を紹介している。料理教室では今年5月から「健康寿命をのばす元気ごはん」コースも開講予定だ。
「僕自身、自炊が必要な時期があって少しずつ料理を覚えたことがあるんです。塩、こしょう以外にも多彩な調味料があることや、何でも具にできるみそ汁の便利さを知って、料理の大変さとともに楽しさも味わい、食事の重要性を再認識しました。にぎやかに囲む食卓で、楽しく栄養をとる機会を増やしていただけたらうれしいですね」

撮影/ノザワヒロミチ 文/長井亜弓

※当ページのコンテンツは、ベターホームのお料理教室の受講生の方のための会報誌「Betterhome Journal」2019年3月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

2018年11月創刊!「Betterhome Journal」

「月刊ベターホーム」が 2018年11月号より、 ベターホームのお料理教室の受講生向け会報誌にリニューアル︕ 「おいしいって、しあわせなこと。」をキャッチフレーズに、 料理レシピや食についての情報を掲載しています。

 

 

 

【シニア世代におすすめの本】

新刊「元気ごはん 栄養素密度が高い食事のすすめ」
日本の健康長寿研究で得られた知識をもとに、栄養素密度が高くなる具体的な毎日の食べ方を紹介します。そして家庭料理のプロが考えた「これならできる!食生活のコツ」を伝授。材料をムダなく使って節約し、調理に手間をかけないコツと、かんたんレシピ。だから毎日続けられます。「食事や健康がちょっと気になる」「バランスよく食べるってどうすればいい?」と気づかう「全世代に」おすすめの本です。

 
つるかめ食堂 60歳からの健康維持レシピ
高齢になってからも、メタボ予防を意識するあまり、中年期と同様に節制ばかりしていると、“低栄養”から老化が早まります。老化の大きな原因は栄養が足りないこと。いつまでも元気でいるために、中年期を過ぎたら、しっかり食べましょう。ベターホームの先生の実体験を元にした、歯が悪いなどの食の悩みを解消する調理法や、ラクに作る工夫などを折りこんだ健康レシピを紹介します。


つるかめ食堂 子が親に作りおくごはん
高齢になると、調理や買物の不自由、歯のトラブルなどで食事をおろそかにしがち。でも、栄養不足が続くと、老化が加速して、寝たきりになることもあります。そんな高齢の親に、いつまでも元気でいてもらうために、子が親の食事の手助けをしませんか。お年寄りが食べやすい食事作りのポイントや、冷凍や宅配のコツなど、忙しい暮らしの中でも実践しやすいヒントが満載。

【ベターホームのお料理教室 健康寿命をのばす元気ごはん】

毎日の食事でいきいきと、健康に
「健康で」「若々しく」「自分らしく」生きることは、どの世代にとっても大切なこと。いつまでも若々しく、元気に過ごすために必要な栄養素をバランスよく取り入れた料理を習いながら、食事のしかたや生活の知恵を楽しく身につけましょう。
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