先生たちの社会科見学

ヤマニ味噌

ベターホームの先生たちが教室を飛び出し、さまざまな食の現場を訪ねてレポートします。
見学するのは、千葉教室 西村千恵子先生(写真左)、千葉教室 星野幸子先生(写真右)


教えてくれるのは、株式会社 ヤマニ味噌 専務取締役 藤川 茂さん

長い歳月を経た木桶で郷土の味を守り続ける
千葉県佐倉市のヤマニ味噌は、130年の歴史を誇る老舗のみそ蔵です。城下町として栄えた佐倉には、かつて多くのみそ蔵がありましたが、いまはヤマニ味噌ただ一社が「佐倉みそ」の味を守っています。

創業明治20(1887)年。昔の蔵に棲んでいた蔵つき酵母は、そのあと建て直した蔵にもしっかりと息づいています。
ヤマニの屋号を染めた前掛け。昔はこの前掛けを肩に当てて重い桶を担(かつ)いだそう。

天然醸造にこだわり、昔ながらの杉の木桶でみそ作りを続けるヤマニ味噌。100年を超す木桶もあり、メンテナンスはかんたんではありません。それでも木桶を使い続ける理由を、専務取締役の藤川茂さんはこう話します。「木桶は厚みがあって内部の温度変化が緩やかなので、ゆっくりじっくり発酵・熟成が進みます。また木桶にはみその発酵に欠かせない酵母菌や乳酸菌などの〝蔵つき酵母〞が棲(す)みついていて、これが唯一無二の蔵の味を作り出すのです」。

木桶は現在も20 本が現役でフル稼働。1 本の木桶で3600kg、およそ20 万杯のみそ汁ができます。
木桶職人がほとんど残っていないため、修繕しながら大切に使い続けています。
昭和初期に建て直した蔵は今も現役。蔵つき酵母を守るために、古い蔵の梁(はり)を移設したそう。

「蔵の味」へのこだわりは随所におよびます。原材料の米と大豆は、地元千葉県産を使用。大豆は雑味の元となる表皮をむいた「脱皮大豆」を使います。

大豆の皮は雑味の原因となるため、ヤマニ味噌では通常の5 倍もの量をていねいにむいた「脱皮大豆」を使用。

一般的には「蒸す」だけの蒸煮(じょうしゃ)の工程では、一度煮てから蒸す「半煮半蒸し法」を行い、大豆のうま味を最大限に引き出しながら、上品な色に仕上げます。

蒸煮がすんでミンチ状に砕かれた大豆と麹、塩が混ざり、ベルトコンベアで木桶に投入されていきます。昔は手作業で行う重労働でした。

また、みその香りの決め手となる酵母菌は、市販の培養酵母を使わず、独自の「種みそ」を継ぎ足しながら仕込んでいます。

種麹は東北のもやし屋(種麹屋)さんから数種類をとり寄せてブレンド。
米を蒸し上げたら、適温にさましたのち、麹菌を種つけして麹を作ります。みその味を左右する重要な工程です。
良質な千葉県産コシヒカリを使い、完成した麹。アミラーゼという酵素の働きででんぷんが分解されており、食べると甘い。

30年前からとり組んでいるのが「二段仕込み」の胚芽米みそ。通常の米麹(こうじ)でみそを仕込んだのち、胚芽米で作った麹をさらに加えて長期熟成させます。深いうま味と甘み、フルーティな香りの芳醇(ほうじゅん)なみそは、全国味噌鑑評会で賞を何度も受賞するほどです。

仕込んで1,2か月で、空の桶に移し替える1回目の「天地返し」を行います。全部で3回ほど天地返しを行い、隅々まで酵素を届けて菌の働きを促します。
仕込みも最終段階の木桶のふたを開けたとたん、みそのいい香りが立ち上ります。
熟成中の白みそ。関西の甘い白みそとは違い、中期熟成で仕上げるやさしい味わいの淡色辛口みそ。

地産地消のみそ作りを行うヤマニ味噌は、地元の学校給食にも使われています。幼いころから親しむみそ汁は、まさに佐倉の味。こうやって郷土の味が次の世代へと受け継がれていくことに思いを馳(は)せた1日でした。

左から、大粒の白目大豆で仕込む“生粋花こうじ” (白みそ)、半煮半蒸し製法で仕込んだ“生粋菜の花” (赤みそ)、胚芽米麹の追い麹を施(ほどこ)した“生粋胚芽米”(赤みそ)。ヤマニ味噌では、おかずみそや塩麴、甘酒、みそ菓子なども扱っています。

「作ってみました!」

“生粋胚芽米”入り白玉だんご “落花生味噌”のソースがけ(写真左)
みそを白玉だんごに練り込み、“ 落花生味噌”をのばしたソースをかけました。
きざんだピーナッツをトッピングして。
“落花生味噌”のみそマヨディップ(写真右)
オリーブ油で焼いた野菜に、“ 落花生味噌”とマヨネーズを混ぜたディップを添えて。
手軽に作れて、野菜がおいしく食べられます。

星野先生「地元にあるよいものをもっと見つけて、地産地消の応援をしたくなりました。」(写真左) 西村先生「職人の技術・経験・勘で、変わらないおいしさを守り続けていることに感動!」(写真右)


【Data】
株式会社ヤマニ味噌
千葉県佐倉市並木町33
TEL : 043-485-4111
Access
【電車の場合】
京成本線京成佐倉駅より徒歩10分。
JR成田線・総武本線佐倉駅より徒歩20分。
(北口より ちばグリーンバス物井線「京成佐倉駅」行きに乗車、「佐倉市役所」下車すぐ)
http://www.yamanimiso.jp
※外部のウェブサイトにつながります
Information
【営】店舗10:30~17:00
(日曜・祝日は11:00~17:00)
WEBサイトからの注文は年中無休。
※表示の情報は掲載日時点の情報です。
掲載した時点以降に変更される場合もありますのであらかじめご了承ください。

撮影/安部まゆみ 文/山田恵子

※当ページのコンテンツは、ベターホームのお料理教室の受講生の方のための会報誌「Betterhome Journal」2019年2月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

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