“低糖質ダイエット”って何?

vol.6糖質と上手につき合う

1年にわたり、糖質と体の関係についてふれてきました。ここで改めて大切なポイントをおさらいしましょう。

[ 取材協力 ]
本田佳子先生
女子栄養大学栄養学部教授(医療栄養学)。管理栄養士。

糖質は脳のエネルギー
人間の体で重要な器官のひとつである脳は、糖質しかエネルギー源にできません。脳は体重の2%ほどの重さしかありませんが、基礎代謝量(生命を維持するための最低限のエネルギー)の10~20%のエネルギーを必要とします。もし、糖質が不足すると、頭がボーッとする。眠くなる、思考力がなくなるなど、日常生活にさまざまな支障が出てきます。

三大栄養素の理想のバランス
栄養素をしっかり摂るには、カロリーはもちろんのこと、各栄養素をまんべんなく摂ることが大切です。特に摂取量が多い三大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質は欠かせません。さらに、ビタミンB群や、食物繊維などは糖質の代謝に関わります。
とくに食物繊維は、糖の吸収を遅らせて血糖値の急激な上昇を抑えます。

糖質制限が脂質を摂りすぎる原因に?
胃袋の容量は1.8リットルほど。腹八分目を満たすためには、1.4~1.5リットルの容量の食事を摂らなければなりません。低糖質ダイエットをする人は、「糖質さえ摂らなければいいんだ」と、ここぞとばかりに肉や魚をたくさん食べて満足感を得ようとする傾向があります。両者はたんぱく源として人間の体に欠かせないものですが、含まれる脂質の量やエネルギーは総じて高め。摂取エネルギーのうち、脂質が45%を超えると動脈硬化を起こしやすくなるというデータもあります。

糖質制限ダイエットをするなら
糖質の摂取をひかえることが、体重コントロールに効果的というのはたしかです。しかし、糖質制限は本来、糖尿病や極端な肥満の治療のために医師の管理下において行うもの。単なるダイエット目的で実践するものではありません。むしろ若い女性では肥満よりも、やせすぎによる健康への悪影響が問題になっているほど。どうしても糖質制限ダイエットにチャレンジするというなら、まずは基本的に健康であること。そのうえで、「体重を少し減らしたい」、「血糖値が少し高めで気になる」程度の人が試すのであればいいでしょう。
その場合は、1日の摂取エネルギーの最低でも40%程度は炭水化物から摂るようにします。糖質を制限し続けることには、精神的にも肉体的にもたいへんなストレスが伴います。まずは1週間程度続け、いったん元の食生活に戻す。その後、体調や体重をみながら1週間程度行うといった具合に、期間を区切って行いましょう。

糖質の摂り方
糖質が体に入ると血糖値が上がります。すると今度はインスリンが分泌され血糖値を下げようとします。適量ならば問題ありませんが、大量に摂取して血糖値が急激に上がると、インスリンも過剰に分泌され、血糖値が下がります。このような血糖値の急激な変動が続くと、肥満や糖尿病を引き起こします。気になる人は、糖質の摂り方を見直しましょう。
① “カーボラスト”のすすめ
血糖値の上昇カーブをゆっくりにするには、最初に糖質以外のものから食べ、糖質はあとにします(=カーボラスト)。糖質以外のもの(食物繊維の多い野菜、きのこなどがよい)を食べたら、その後は「三角食べ(主食、主菜、副菜、汁ものを交互に食べる)」をくり返しましょう。
② よくかんで食べる
満腹感を得るためには、脳に「食事はたりていますよ」という指令が行かなければなりませんが、それには少々の時間を要します。できれば15分以上はかけてゆっくり食事をするようにしたいものです。
ゆっくり食事をするコツは3つ。口に箸を運ぶ回数が増えるように「皿数を増やす」。咀嚼の回数が増えるように「かたいものを食べる」、「食材を大きめに切る」。よくかむことでだ液の分泌が増え、血糖値の上昇スピードを抑えられます。
③ 糖質は三食に分けて摂る
「朝ごはんを抜く」、「ダイエットのために夕飯は炭水化物を食べない」といった食生活を送っていませんか。糖質を抜いて、欠乏している体に糖質が一度に入ると、血糖値も一気に上がってしまいます。糖質は三食に分けて、まんべんなく摂りましょう。

バランスよく、腹八分目に
人間はさまざまな食物から必要な栄養素をとりいれることで体をつくり、生命活動をしています。ひとつの栄養素だけでは成り立ちません。糖質に限らず、特定の栄養素に過剰に頼ったり、逆に極端に制限・排除したりするダイエットについて、その効果は認められておらず、体に悪影響を及ぼしかねません。結局は「バランスよく、腹八分目に食べる」ことに尽きるのです。

バランスよく食べよう
忙しくても菓子パンだけ、糖質抜きのサラダだけの朝食はNG。パンにウィンナーソーセージや、ちょっとした野菜・フルーツを添えれば満腹感があり、栄養のバランスも整う。

※当ページのコンテンツは、「月刊ベターホーム」本誌2018年3月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

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