知らなかった冷凍の科学

家庭での冷凍&解凍の基本を、科学的な観点からまとめました。毎日何気なく使っている冷凍庫。便利な反面、冷凍するとどうして食品の食感が変わるのか、
いつまで冷凍しておけるのか、ギモンもいっぱいです。そこで、冷凍について調べてみると…、
冷凍の科学的なメカニズムから、冷凍の悩みを解決するヒントが見つかりました。

取材協力
東京工科大学応用生物学部
梶原一人(かじわら かずひと) 先生
専門分野は機能性食品、生物保存など。食品に関する研究を幅広く手がけ、生体関連物質の凍結保存・乾燥保存に関する研究を行っている。
※当ページの掲載内容は、以下の冊子から転載しました。

ポジティブ フリージング読本

当ページの冷凍の科学にもとづいた、
・今日からできる、冷凍&解凍の基本とコツ
・135食材の、冷凍期間、冷凍&解凍方法を記載した冷凍事典
・冷凍のしくみをいかしておいしい、フリージングレシピ
を紹介。

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B5判変型/64ページ/
税抜417円(税込450円・送料別)

フリージングも鮮度が大切。栄養もキープできる

肉や魚、野菜などの食品を室温におくと、日ごとに味や栄養価は落ちて、くさっていきます。その原因は空気にふれて酸化が進んだり、乾燥したりといった外的要因と、食品に含まれる酵素や微生物の働き、野菜などの呼吸による内的要因です。

冷凍庫の温度は、多くが-18℃以下に設定されています。この温度帯では、腐敗や食中毒の原因になるほとんどの菌類や微生物、酵素の分解作用が働くことはありません。内的要因がクリアされ、あとは、外的要因である乾燥や酸化を防げば、食品を長期間保存することが可能となるわけです。

食品の酵素の働きをストップできれば、野菜などの栄養価の減少も防げます。たとえば、ほうれんそうを3~4℃で9日間保存した場合、収穫時期にもよりますが、ビタミンCは保存開始時の30%ほどにまで減ります。しかもビタミンCは水溶性なので、ゆでると湯に溶け出し、実際に摂取できるビタミンCはさらに減ることに。

一方、買ったばかりのほうれんそうを20秒ほどゆでて、-24℃で冷凍保存をした実験では、1ヵ月後のビタミンC含有量は、ゆでた直後より多少減った程度で、数ヵ月経過後も大きな変動はありませんでした(表1)。カロテン、ビタミンB群、ナイアシンといった栄養素においても、ゆでた直後と同様の栄養価が保てました。そのほかの野菜についても、種類によって差はありますが、冷凍時の栄養価をある程度保てることがわかっています。

表1)辻村卓・荒井京子・小松原晴美・笠井孝正「冷凍あるいは凍結乾燥処理した野菜・果実中のビタミン含有量に及ぼす通年貯蔵の影響」日本食品保蔵科学会誌 vol. 23 NO.1 1997年より作成。

つまり、野菜を野菜室で保存しておくよりも、新鮮なうちにゆでて冷凍したほうが、食感は変わりますが、摂取できる栄養価は高いと考えられます。冷凍した食品のおいしさも栄養も保つには鮮度が大切なのです。

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冷凍すると、食品はこわれる?!

冷凍による物理的ダメージ

水を凍らせると氷になり、その氷を溶かせばまた水に戻ります。冷凍した食品も、解凍したら元の状態に戻るのでしょうか? 答えは残念ながらNo。一度凍った食品は、冷凍前と同じ状態には戻りません。

肉や魚、野菜などの食品は、平均で60%ほどの水分を含んでいます。これらの食品を生の状態で冷凍すると、食品細胞の一部の水分が凍り始め、「氷の核」ができます。氷の核は、まわりにあるより小さい氷や水分を抱えこみ、体積を増やして「氷の結晶」に変化していきます。すると、膨張した氷の結晶は、食品の細胞膜や細胞壁を押しつぶしたり、こわしたりしてしまいます。

解凍した食品を食べて、生のものを調理したときよりもやわらかいと感じたことはありませんか。冷凍した食品を解凍すると、細胞内の氷が溶けて水になり、傷ついた細胞から流れ出ていきます(この水分を「ドリップ」といいます)。水分を失い、組織がやわらかくなった食品は食感が失われて、フニャッとします。また、ドリップには食品本来のうま味や栄養も含まれているので、味わいもぐっと落ちます。

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ダメージを防ぐ、冷凍前の下ごしらえ

食品の細胞の水分が多いと、当然、氷の結晶は多くなり、細胞が受けるダメージは大きくなります。しかし、ある“下ごしらえ”で食品内の水分量を少なく抑えれば、氷の結晶は少なくなるので、ダメージも抑えることができます。その下ごしらえとは…

1. 調味料で水分を引き出す

調理の際に肉や魚に塩をふると、水気が出てきますが、それは浸透圧の関係で細胞から水分が引き出されるため。その状態で冷凍すれば、細胞内の水分が減少し、氷の結晶は小さく抑えられるので、生で凍らせるよりダメージを減らせます。

2. 野菜類はゆでる

野菜やくだものは、水分量が80~90%と多いため、冷凍して解凍するとドリップがたくさん出ます。サラダなどシャキシャキした状態で食べるものには冷凍は不向きですが、青菜や根菜類などの多くの野菜は、さっとゆでてから冷凍すると、食感の大きな変化や変色などを防げます。かためにゆでることを「ブランチング」といい、市販の冷凍野菜でも用いられている手法です。熱によって酵素がこわれるので、栄養価も失われにくくなります。

こんなメリットもある

  • ①冷凍で細胞は多少こわれるので、下味をつけておくと、中まで味が入りこみ、調味料の量が少なくてすむ。減塩にも!
  • ②冷凍中の乾燥が防げる。
  • ③下ごしらえがすんでいるので、使うときに、調理時間が短縮できる。
   
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「急速冷凍」をめざして、速く凍らせよう

ただし、氷の結晶の大きさは、凍る温度とスピードも関わってきます。食品がもっとも速く凍る(氷の結晶が成長しにくい)温度は-40℃付近。一方、氷の結晶がもっとも大きく成長するのは-5~-1℃です。結晶が大きくなる-5~-1℃の温度帯を、専門用語で「最大氷結晶生成温度帯」といいます(表2のc)。

この温度帯にとどまる時間が長いほど、氷の結晶は大きくなるわけです。ダメージを抑えるには、-5 ~-1℃をいち早く抜けて、食品全体を凍らせる必要があります。市販の冷凍食品は、多くが-35℃以下で、すばやく冷凍(急速冷凍)させていますが(表2のa)、残念ながら家庭の冷凍庫の温度では、通過するのに時間がかかり、氷の結晶が大きくなります(表2のb)。

家庭で冷凍するときには、
・下ごしらえをして、さらに食品の厚みを薄くする
・保冷剤を活用する
・冷凍庫の急速冷凍モードを使う
など、できるだけ速く凍らせる工夫が必要です。

冷凍に向くもの・向かないもの

冷凍の科学的なしくみから、冷凍に向くのは、水分が少なく、組織のしっかりした食品といえます。

急速冷凍なら

組織のしっかりした、生の肉や魚介類などは冷凍向き。ただし魚は種類によって冷凍耐性に差があります。まぐろやかつおなどの回遊する赤身の魚、組織のしっかりしているいかやたこは冷凍向きで、市場にも船上冷凍されたものが出回っています。 
たらなどの白身魚、産卵後の魚は組織が弱く、そのままで冷凍すると、解凍の際にドリップがたくさん出て、おいしくありません。

ホームフリージングに向くものは

家庭用冷凍庫での冷凍に特に向くのは、乾燥品や加熱処理をしたもの、塩に漬けたものなど、食品中の水分が比較的少ないものです。
また、スープやソース類、裏ごしした野菜など、すでに組織がこわれているものや、パン、ごはん、もち、納豆も、冷凍しても品質の低下が少ないといわれています。
(参考:日本冷凍食品協会HP http://www.reishokukyo.or.jp/

   
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ダメージを防ぐ解凍法

おいしさと安全のための、解凍温度

おいしく、安全に食べるには、適切な温度で解凍する必要があります。

1つめは、冷凍するときと同じ-5~-1℃をすばやく通過させること。この温度帯にとどまる時間が長いと、食品内の凍らなかった水が凍り始めるので、細胞が再びダメージを受けます。

2つめは、5~25℃の常温を避けること(一部、常温解凍でも大丈夫なものもある)。冷凍時に大きなダメージを受けた食品を常温で解凍すると、ドリップがたくさん出てきます。ドリップは水分と栄養を含んでおり、菌の繁殖に格好の環境です。食品を解凍するときは、冷蔵庫や氷水など1~5℃の低温で解凍するか、高温で一気に加熱するようにします。

安全に美おいしく食べるための解凍方法はこの3つ!
1.加熱解凍(調理)
食材を凍ったままか、半解凍の状態で鍋などに入れて一気に火を通す。
2.冷蔵庫内での解凍
冷蔵庫は食品全体を低温に保ち、ダメージが少ない状態で解凍できる。
3.氷水解凍
氷水につけて解凍する。氷水は冷蔵庫と同じくらいの温度。水は空気より熱伝導率が高いので、さらに速く解凍できる。
常温解凍は避ける
やむを得ず行う場合は、解凍後すぐに調理する。
常温での解凍に向くものは、パンやまんじゅう、スポンジケーキなど。
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冷凍しても、永久には保存できません

冷凍中も食品の品質は変わっていく

冷凍した食品のおいしさを保てる期間は、冷凍前の食品の鮮度や品質、冷凍方法、保存の状態によって異なってきますが、家庭用の冷凍庫なら数週間~1ヵ月程度です。賞味期限のないアイスクリームも家庭で保存すると、2週間ほどでザラつき、食感が悪くなります。以前に比べ、家庭用の冷凍庫は進化したとはいえ、開け閉めなどにより温度や湿度は変化し、食品の品質が変わりやすいのです。さらに、冷凍庫内は乾燥やにおいなど、“おいしさの敵”が多い場所でもあります。 

霜と乾燥

冷凍すると、食品に霜がつきます。冷凍庫内の温度が上がったり下がったりすると、それにともなって、食品も凍ったり溶けたりします。溶けた水分が再び凍ると、それが霜として食品の表面などにつくのです。霜の正体は食品が本来もっていた水分なので、霜がついている食品ほど乾燥していて、風味が落ちます。

油やけ

食品は脂肪が空気にふれて酸化すると、油やけを起こします。油やけすると、表面が変色して焼けたような状態になり、味も落ちて体にもよくありません。特に、油やけしやすいのは、不飽和脂肪酸を多く含むさばや干物などの魚類です。

におい移り

家庭の冷凍庫では、あらゆる食材を保存するので、様々なにおいが出ます。においは冷凍庫内や保存袋に移り、それがにおいを吸収しやすいパンなどの食品に移ります。

保存時の敵を防ぐにはラップ、保存袋などで、食品を守るひと手間が欠かせません。

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冷凍を、かしこく活用しよう!

ベターホームでは、いたみやすいとされる豚ひき肉の一般生菌数*を食品分析機関にて独自に調査しました。使用したのは、スーパーで購入した豚ひき肉をラップで包んで冷凍し、冷蔵庫で解凍したもの。それを食べる状態まで炒めると、生菌数は「300以下/g」になりました。その結果を、厚生労働省で定めている販売用のおそうざいの衛生規範と照らしあわせたところ、充分に下回る数値でした(表3)。ひき肉を、生のまま冷凍しても、食べるときにしっかり加熱すれば、生菌数に問題はみられませんでした。

*一般生菌数とは,一定の条件下のもとで発育した中温性好気性菌数のこと。食品の微生物汚染の程度を示す代表的な指標。
*厚生労働省通知による「弁当及びそうざいの衛生規範」、そうざい類(加熱処理製品)の微生物に関するものを抜粋し作成。

ただし、衛生状態は、冷凍前の食品の鮮度や保存状態によっても左右され、解凍して2時間たつと、細菌類は増加し始めるともいいます。これまで述べてきた冷凍のメカニズムから、大なり小なり、冷凍による食品へのダメージは避けられません。冷凍するときは、必ず鮮度のよいものを選び、冷凍したからといって過信せず、早めに使うようにします。そして解凍後は時間をおかずに、調理しましょう。

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冷凍は、私たちの頼もしい味方です。
冷凍上手は暮らし上手。これからは、ただ冷凍庫に詰めこむのではなく、「おいしいものを、おいしいうちに」かしこく食べる、ポジティブ フリージングをはじめませんか?

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